窓販向け外貨建一時払終身保険に改定の動き。商品改定や手数料体系変更へ-日経報道。

10月8日の日本経済新聞朝刊に、金融機関の窓口で取り扱う外貨建一時払終身保険に関する記事がありました。

記事によると、

< 生命保険各社が外貨建保険を見直している。MS&ADインシュアランスグループホールディングス傘下の三井住友海上プライマリー生命保険は2025年4月をめどに運用含み益が目標値に届くと円建に自動で切り替わる「目標到達型」を一部商品でなくす方針だ。T&Dフィナンシャル生命保険は10月から目標値を設けない商品を加える。

 …

 三井住友海上プライマリー生命は25年4月をめどに商品設計を見直す方針だ。資産形成ニーズの高い商品では運用目標値の下限を105%から120%に引き上げ、死亡保障を重視する商品では目標設定をなくす。

 T&Dフィナンシャル生命保険は10月から外貨建保険の品ぞろえに目標を設定しないタイプの商品を加えた。一部の大手銀行や地方銀行から引き合いがあり、三菱信託銀行など4つの金融機関が取り扱う。

 第一生命ホールディングス傘下の第一フロンティア生命保険も今月から外貨建保険の運用目標を下限の105%から120%に引き上げる。

 外貨建保険の商品設計を見直す動きは大手が先行する。日本生命保険と明治安田生命保険は25年4月以降の新契約分から目標到達型の販売を取りやめる方針を既に発表している。日本生命は販売会社に支払手数料も見直す。25年4月以降の初年度手数料を新契約から引き下げる。これまでは大半の契約で初年度手数料が全体の9割を占めていたが、半分程度にする。>


とのことです。

【管理人の感想】
管理人が確認した限りですが、窓販向けの外貨建一時払終身保険における、商品改定及び手数料体系の変更をニュースリリースで公表しているのは日本生命*のみでした。

*詳しくはこちらをどうぞ。
  • 8/28 ニュースリリース【外貨建一時払保険における「顧客の最善の利益」追及に向けた対応について(PDF)

    商品改定と手数料体系の変更を行うことになった背景には、金融庁が今年7月5日に取りまとめた「リスク性金融商品の販売・組成会社による
    顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果等について(2023事務年度)」*での指摘があります。

    *1.概要版はこちら※該当ページはP4~6

    *2.全体版はこちら該当ページはP9~12

    モニタリング結果の中間報告書が公表された際の記事で述べましたが、「外貨建一時払終身で資産形成」なんて意味がありません。保険は保障を確保するために契約すればいいのであって、資産形成であれば株式投資や投資信託という投資性金融商品を購入して、中長期にわたってじっくり資産形成をすればいいのです。

    【金融庁の指摘】
    以下、モニタリング結果における金融庁の指摘概要です(全体版P9~12より抜粋・転載)。

    (1)リスク性金融商品の販売・管理等における態勢面の課題等

    〇リスク性金融商品の販売会社等におけるモニタリングの着眼点


    ①プロダクトガバナンス態勢の整備・構築
     顧客の最善の利益の実現を図る観点から、販売会社においても、適切な検証期間の下でのリスク・リターンの合理性等20や自らの想定顧客層に適した金融商品かどうかについて検証を行った上で、顧客の最善の利益の追求に資するリスク性金融商品の導入を判断することが重要である。

     また、金融商品を導入した後も、販売実績等を基に商品性を継続的に検証し、必要に応じて商品の見直し等を行うことが重要である。

    ②販売・管理態勢及び従業員に対する適切な動機付けの枠組み等の整備・構築
    (イ)販売・管理態勢

     販売会社は、複雑又はリスクの高い金融商品の販売・推奨等を行う場合には、コスト(名目を問わず、顧客が負担する手数料その他の費用)やリスク・リターン等といったリスク性金融商品の販売・推奨等に係る重要な情報について、他の金融商品と比較しながら顧客に分かりやすく提供すべきとされている。

     また、販売会社は、顧客の資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズ等を把握した上で、同顧客にふさわしい金融商品の販売・推奨等を行うべきとされている。

    (ロ)従業員に対する適切な動機付けの枠組み等
     販売会社は、顧客本位の業務運営を確保する観点から、適切な販売・管理等を促進するよう、報酬・業績評価体系等といった従業員に対する適切な動機付けの枠組み等を整備等すべきとされている。

    (※)上記①及び②に係る整備・構築を進めていく中で、必要に応じて、販売会社と組成会社とが連携して取り組むことが期待される。

    (2)販売会社等へのモニタリング結果
     今事務年度、上記(1)を着眼点として個別のリスク性金融商品の販売・管理態勢等についてモニタリングを行った結果、以下の課題及び工夫事例が見られた。

    ①外貨建一時払保険
    (イ)プロダクトガバナンス態勢

     多くの重点先(販売会社)では、リスク・リターン検証を十分に行わないまま、実質的な議論を行うことなく、予定利率や積立利率といった表面金利等の形式的な情報を踏まえて商品を導入していた。なお、金融庁において、実際に販売されている外貨建一時払保険に係る実態を把握する観点から、同保険商品の一部について運用パフォーマンス分析を行った(下記【参考①】参照)。

    【参考①】金融庁における外貨建一時払保険の運用パフォーマンス分析
    (1)金融庁において、代表的な運用型の外貨建一時払保険(8商品)の運用パフォーマンスを分析したところ、2023年8月末時点での運用終了分の同保険は、少なくとも今般のモニタリング実施時での販売・管理の下では、継続期間5年以上の同保険と比べて劣後していることが分かった。

    (2)次に、2023年8月末時点での運用終了分の外貨建一時払保険について、運用パフォーマンスが劣後している背景について、以下①及び②のとおり、分析を行った。

     ①外貨建一時払保険は、長期保有を前提に販売されている商品であるが、少なくとも今般のモニタリング実施時での販売・管理の下では、ターゲット型保険を中心に同保険購入後4年間で約6割の解約等が発生していることから、契約継続期間の平均は2.5年と短期化している。

     ②契約継続期間の短期化に伴い、顧客が複利運用効果が十分に享受できていない可能性があるほか、解約や運用終了に伴い発生する費用(市場価格調整と解約控除)が利幅を押し下げている状況が窺われた。

    (ロ)販売・管理態勢
     多くの重点先(販売会社)では、運用型の外貨建一時払保険について、マネープランガイド等における商品カテゴリー毎のリターン・コスト等の大まかな大小比較を示すにとどまり、個別の金融商品の重要な情報について、他の金融商品と比較しながら説明・提案することが十分にできていなかった。

     多くの重点先(販売会社)では、「株・債券・為替という言葉は知っているが、詳しくは知らない」といった為替・金利リスクを理解できていない可能性の高い顧客や、「安定的な運用をして資金準備をしたい」といったリスク許容度が低いと考えられる顧客に外貨建一時払保険を販売していた(下記【参考②】参照)。

     なお、一部の重点先(販売会社)の第2線・第3線では、営業現場において顧客属性を適切に把握した上で、同顧客にふさわしい金融商品を販売しているか、顧客本位の観点からの検証・監査が十分に実施されていなかった。

    【参考②】外貨建一時払保険の販売先(顧客層)に関する、金融庁による検証の結果
     「元本毀損するとは聞いていない」といった苦情が発生していることを踏まえて、金融庁において、販売会社における347名分の顧客カードを分析したところ、2割の顧客で外貨建一時払保険を購入するための知識・投資経験不足の懸念や投資方針との不一致の懸念が認められた。

    ○上記のほか、ターゲット型保険について、長期保有を前提に販売されているにもかかわらず解約が多い状況を踏まえ(上記【参考①】参照)、販売・管理態勢を検証したところ、以下の課題が見られた。
     
     ・多くの重点先(販売会社)では、目標値に到達したターゲット型保険の多くが解約され、同時に同一商品を同一顧客に販売する乗換販売が発生していた。なお、こうした乗換販売は、販売手数料等が二重に発生することを考慮すると、必ずしも顧客にとって経済合理性があるとは言えないと考えられる。

     ・一部の重点先(販売会社)では、保障・相続ニーズがある顧客に外貨建一時払保険を販売しているとしているが、解約した顧客についてはこれらのニーズが充たせていない可能性がある。

    (ハ)販売後の管理(顧客のフォローアップ)及び手数料体系(適切な動機付けの枠組み)

    ○販売後の管理(顧客のフォローアップ)に係る工夫事例

     外貨建一時払保険のうち、ターゲット型保険の多くが目標値に到達すると解約されており、

     ・解約に伴い発生する費用が顧客の利幅を押し下げていること、

     ・解約後、同一商品を同一顧客に販売する乗換販売が発生していること、

     が確認された。これらへの対応の一つとして、一部の販売会社又は組成会社において、ターゲット型保険を保有する顧客が同保険を解約する前に、営業現場の適切なフォローアップを行うよう促す取組みなど、以下の工夫事例が見られた。

    ☆販売会社における工夫事例
    事例1:乗換販売を防止する観点から、適切なフォローアップを行った職員に対してプラスの業績評価を行うこととした事例

    事例2:顧客が低い目標値を設定しているターゲット型保険について、優先的にフォローアップを開始した事例


    ☆組成会社における工夫事例
    事例1:販売会社が目標値到達前に顧客に対して適時・適切なフォローアップができるよう、定期的又は販売会社の要請に応じて、目標値が設定されているターゲット型保険に係る契約一覧を販売会社に提供している事例

    事例2:乗換販売発生の主要因を販売会社におけるターゲット型保険のフォローアップ態勢の不備と判断し、販売会社の態勢改善が確認できるまで、新たなターゲット型保険の商品組成を行わないこととした事例


    ○手数料体系(適切な動機付けの枠組み)の検証結果
     上記の工夫事例において掲げられる顧客への丁寧なフォローアップを行う販売会社は限られている。この背景の一つとして、多くの重点先では、販売会社が組成会社から受け取る手数料の体系が、顧客へのフォローアップ等を行う役務負担に見合ったものとなっていないことが考えられる。

     具体的には、実務上、初年度の役務(商品説明・契約等)の負担に比べて、2年目以降から満期までの役務(顧客へのフォローアップ等)の負担合計の方が大きい状況が見受けられるものの、販売会社が組成会社から受け取る手数料の体系を見ると、初年度の比重が高いL字型(例えば、初年度5.5%、2年目以降0.1%等)やⅠ字型が採用されており、同手数料体系の下では「販売後のフォローアップ」以上に「販売勧誘(商品説明・契約等含む)」が促されていたと考えられる。

     なお、一部の重点先では、こうした手数料体系に問題意識を持った上で、見直しを検討していることが確認された。


    以上です。

    DSC05157.JPG
    ↑よそ様のキバナコスモスにやってきたナミアゲハ夏型の♂(8月撮影)。

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